屋根の設計基準の確認とメーカーの保証範囲
奈良県で注文住宅を建てるランドマークです。
不動産会社の家でなく、工務店の家でもない、
設計事務所の創る家は、おのずと手法が変わります。
このたび、設計した家は、施主様のご希望で、屋根の勾配が緩い家になります。
ランドマークの一般的な家は、屋根葺材がカラーベスト(彩色スレート)か瓦で、
屋根勾配が4.5寸(水平10に対し4.5上がる勾配)が標準になりますが、
太陽光発電設備の機能を考えると、片流れの屋根になり、
屋根勾配が4.5寸では、軒先は2階建てでも、反対の軒は3階のように切り立って、
周辺の家の採光を遮ることになりかねません。
デザイン上も、よろしくないものになります。
そこで、一つは、片流れにしても、屋根全体でなく、2/3程度にして、北側に圧迫感を
与えないデザインにしたり、緩い勾配の屋根にする方法もあります。
緩勾配の屋根の一般的な工法は、鋼板瓦棒葺になります。
従来からのある屋根工法ですが、
さすがに最近はこの屋根はめっきり減りました。
私の若いころのニューハウスなる家は鋼板瓦棒葺きの軽快なデザインも多くあり
ましたが、鋼板の性能や、雨音、夏の太陽輻射熱の断熱などの問題で、ほぼなくなり
ました。
今でも、デザインにとんがった設計事務所の家には散見されますが。
この際の家では、片流れの屋根の希望に対し、私の取った方法は、
通常は4.5寸でする彩色スレートの勾配を2.5寸に緩くすることです。
これが、彩色スレート(カラーベスト)です。
このよな、美しく素敵な瓦屋根も多くなりました。
いずれも4.5寸が標準勾配です。
30年ほど前までは、2.5寸の緩い勾配は普通にありましたが、
現在は、性能上、小さい流れの屋根などに限り、メーカーとして認めて、
長い流れの屋根は基準外となってます。
ところが、メーカーに問合せしますと、下地の対応で個別に(施工登録)が可能でした
ので、この方法により、2.5寸という、緩い勾配の屋根の設計をしました。
カタログ数値だけでなく、変わった仕様はメーカーの保証との関係で、可能な範囲や
保証のことを検討することが大切になります。
設計事務所ですので。
このメーカー曰く、主に公共建築で、入札でゼネコンが工事を請負ってから、
VEで仕様変更をする中で、商品の基準外でも、施工をする傾向があるので、
メーカーとして保証可能な範囲を決めて、個別に施工の登録を対応してるとのこと。
(VEとは=製品・半製品の品質や信頼性という機能的価値を低下させずに、製品の
生産コスト、半製品の購入価格の低減を行う方法。)
端的に言って、同じ性能で、安い他に代わるものがないかという設計手法。
今回の屋根勾配の緩い家は、コストダウンのVEではなく、屋根材のメーカーが
仕様と保証のハザマで、施工会社が異常なVEをして、性能保証ができない建物
になるのを防ぐ為、屋根下地を含む個別の施工登録するというメーカーの苦労話で、
ランドマークの、緩い勾配の家をしたいお客様のデザインの、
メーカーの保証を取る中で交わされた苦労話でした。
逆に、ランドマークでは、性能を重視しコストUPしてでも、仕様改善をしつつあります。
例えば、この大型の軒樋ですが、小さな樋より、コストUPにはなりますが、
雨の集水性能が良いことに加え、デザイン上は、「破風」になり、屋根の縁に
締まりが出るデザインの良さがあり、採用するようになりました。
このような、良い意味でのVEは常にしていて、
必要なことは、メーカーに説明に来ていただいてます。